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午前二時という歌詞に彩られた楽曲たち~邦楽ロック9曲を分析

月日や時間が歌詞の中に出てくる歌は、その時に合わせて聞きたくなったりしますよね。今だと、フジファブリックの赤黄色の金木犀を聞きながら、たまらなくなって帰り道を歩きたくなったり。来月はTHE ORAL CIGARETTESのハロウィンの余韻あたりが盛り上がってくるかな。

今回は中でも時間に注目して、歌詞に「午前二時」が出てくる曲に注目してみました。「午前二時」と聞いて、今、あなたの脳内に流れてきた曲も、入っているかも?

午前二時という歌詞は、2010年代の邦楽ロックバンドの楽曲でいくつか見受けられる。具体的に楽曲と収録アルバムのリリース年月を挙げてみると

OWL /ストレイテナー(2010)
表参道26時/ サカナクション(2010)
ベルリン/ People in the box(2010)
アワーミュージック/ 相対性理論+渋谷慶一郎(2010)
二次元グラマラス/ 空想委員会(2011)
Noah / androp (2011)
Fool’s Gold / tacica (2013)
No.8 / The Cheserasera (2015)

そして、忘れちゃいけない一曲がこちら。

午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった
(天体観測 by BUMP OF CHICKEN)

午前二時って「フミキリ」を導く枕詞なんじゃないかってくらい、その言葉を印象付けた一曲「天体観測」は2001年のリリース。00年代で午前二時が出てくる曲って天体観測以外にあるのか…!?もしあれば、ぜひご一報ください。

以上9 曲を並べてみたところで、素朴な疑問。それは「午前二時にみんな何してるの?歌の中で何が起こってるの?」っていうことです。そこで、天体観測以外の8曲を3つに分類してみました。

1)夜の街に遊ぶ – ストレイテナー / サカナクション

いつもと違う欠け方をしてる 午前2時の月の光は ビルの間を擦り抜けて飛ぶ 梟たちの陰になって見えないぜ
(OWL /ストレイテナー)

苦笑いして 握りしめた手には汗 表参道の26時が過ぎてく
(表参道26時/ サカナクション)

この二曲のキーワードは「夜の街」。街も夜の顔、主人公たちも夜の顔。テナーは闇夜に遊ぶ人々を”Owl-like Creatures”と、夜の狩人フクロウになぞらえています。これから「彼」も電話を受けて、冴えた目になり、体も覚醒して、Owl-like Creaturesの仲間入りをするわけですね。ストレイテナーのOWLは、調べていて出会った曲なんだけど、アルバムの冒頭曲でした。ずしっとしたビートにコーラスが乗っかって、堂々とオープニングを飾る曲です。

表参道26時は、小説的な視点で男女の心のすれ違いを歌った一曲。ちょっと渋いバーなんかのカウンターで話してる「二人」が浮かぶ。鳴り響くサイレンのようなイントロから始まるこの曲はライブでも披露されることがあって人気ある曲だよね。間奏は「246左折そう聞こえた~246左折~」と歌っているらしい。厳密には歌詞に午前二時って出てきませんが、特別枠で載せちゃいます。。筆者は魚民ですから。。

2)一人の世界で思索-People in the box / tacica / 空想委員会

そんな言葉の手紙を 読まないで破り捨てた午前二時
刻一刻と駄目になる自分は真夜中に現れる
(Fool’s Gold / tacica)

午前2時の友達
遠く離れた裸の秘密警察
明日には僕はここにいない
(ベルリン/ People in the box)

ふと気を抜いた瞬間 思考と思考の間に
今夜も君のことを思い出した午前2時
(二次元グラマラス/ 空想委員会)

三者三様の物思いがあるようです。tacicaとpeopleだけれど、この歌どう解釈できるんだろうなって考えるだけで朝になりそう。ムズい。Peopleに関しては「小さい子供が描いた絵本の内容がめちゃくちゃ終末感漂ってて狂気感じる」みたいな印象を持ってます。つまり、無垢なゆえに恐ろしいものを平気で描いてしまう残酷さのようなものを歌詞から感じるってことです。

空想委員会はもう会えなくなった「君」を思って、まだ癒えていない傷跡を思い出しているようです。”恋愛低偏差値バンド”の空想委員会にこう歌われると、男子の女々しさとか情けなさがフォーカスされるね。

3)恋人と共にーandrop / 相対性理論+渋谷慶一郎 / The Cheserasera

朝が来れば別の道 君と一緒午前二時 君の涙に触れる 呼吸をする空気も見えなくて
(Noah / androp)

ロマン街道横目でチラリ 月曜の午前二時
三つ編みがはずむほど 千のルート探してる
(アワーミュージック/ 相対性理論+渋谷慶一郎)

午前二時 黒い陰 引き出して踏みつけて泣いた 君がもう忘れてた 恋の傷だった
(No.8 / The Cheserasera)

二人の間に流れる柔らかな時間は、午前二時という言葉によって悲しくなったり、愛おしさが増したり。andropのNoahは、くぐもった音の感じと、身を預けられるような心地よいテンポが、二人だけの空間っぽさを増幅してとても切ない。ラジオで録音して音質の落ちたNoahを二人で聞いてるんじゃないか、みたいな妄想が止まらない。少女漫画のような二人です。

続いてアワーミュージック、これはやくしまるえつこさんのボーカルが浮遊感を生んで、静かな夜を満たしてくれます。気ままな女の子と「ダーリン」の愛おしい日常、ちょっと背伸びした休日が思い浮かぶ一曲。

No.8はThe Cheserasera(ケセラセラ)の中でも一、二を争う泣きのセンチメンタル美メロではないかなぁ、大好きな曲。Vo&gtの宍戸翼さんは、バインとかシロップが好きみたいです。倦怠感を持ちながら日々を過ごし、ああ、でも僕にはこの人がいるんだった、あるいはあの人がいたんだった、と、真夜中にふと思い出したときに聞きたい。

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いかがでしたでしょうか?午前二時を迎えると、いよいよ深夜帯に差し掛かって日常と切り離された感覚になるのは自分だけでしょうか。この断絶感あるいは高揚感が、午前二時という言葉には秘められているのでは。なかなか眠れない夜には、今回紹介した曲たちをお供にしてみてくださいね。